野口宇宙飛行士、SDGsを語る

6月1日付でJAXAを退職された野口宇宙飛行士が、8月21日に放送された『Style2030 賢者が映す未来』というBS-TBSの番組にゲスト出演され、その中でSDGsについて語っていたようです。

3度の宇宙飛行を経験し、日本人最長となる国際宇宙ステーション滞在記録を持つ野口が注目したSDGsの目標は「気候変動に具体的な対策を」と「ジェンダー平等を実現しよう」。宇宙から3回見た北極圏の氷は、驚くべきスピードで溶けていたという。野口は「気候変動による地球の危機を前に行動を起こさないことは『悪』だ」と強い言葉で言い切る。

宇宙飛行士・野口聡一がSDGs対談番組『Style2030』に出演 宇宙からの視点で“気候変動”“ジェンダー平等”を語る | TV LIFE web

対象が何であれ、悪だと断ずるような物言いは、JAXA職員でいらした当時は見かけたことがなかったような。広報観点で何かそのような配慮が当時あったのかどうかはわかりませんけど、いずれにしても確かに強い表現ではありますね。宇宙から気候変動の影響を目の当たりにした野口宇宙飛行士が、そのような強い表現を使って対応を呼びかけたのは、当然の帰結と映りますし、また頼もしいなとも思います。

そして「ジェンダー平等」については、女性リーダーが多く存在していたNASAでの経験から、ジェンダーなど多様性のあるチームでは、「命に関わる重大な問題」に対して多様なアプローチが生まれ、課題解決につながると話した。

宇宙飛行士・野口聡一がSDGs対談番組『Style2030』に出演 宇宙からの視点で“気候変動”“ジェンダー平等”を語る | TV LIFE web

多様性を重んじることの重要性、から演繹的にジェンダー平等への貢献を論じているようです。国連宇宙部のWebサイト(Sustainable Development Goal 5: Gender Equality)で、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」については、宇宙技術が貢献する要素として遠隔の孤立したコミュニティに向けた質の高い教育の提供、トレーニングやソフトインフラ、情報や安全へのアクセス提供を通じた女性起業家の支援、科学・技術・工学・数学(STEM)を中心としたキャリア形成の機会提供などが挙げられていましたが、それらとは少し異なる視点として興味深いです。

野口が近年考えて続けているテーマに「人類の宇宙進出の先にある持続可能な社会とは?」という問いがあるという。2020年代に入り、官民さまざまな有人宇宙開発の取組みが加速するいっぽう、航空宇宙産業においては地球規模での気候危機を回避するための脱炭素社会への取り組み、カーボンニュートラルの実現が喫緊の課題となっている。SDGsをテーマとする対談番組で、人類の宇宙進出が社会にもたらす価値について、幅広く知ってもらいたいという思いから、出演オファーを受けたと野口は話す。

宇宙飛行士・野口聡一がSDGs対談番組『Style2030』に出演 宇宙からの視点で“気候変動”“ジェンダー平等”を語る | TV LIFE web

期せずして?私も近いようなテーマを考えてきましたし、大学院での研究テーマとした「社会課題解決手段としての側面に焦点を当てた宇宙開発広報の可能性に関する考察」というのは、ある意味その一環だったりしましたので、何かこうすごく親近感を(一方的にですが)覚えました。ぜひこれからも、SDGsや社会課題と宇宙開発の界面について、野口宇宙飛行士ならではの視点から、発信していただきたいと思います。