宇宙ビジネスはSDGs的?

この記事は、宇宙開発とサステナビリティ Advent Calendar 2022の8日目の記事です。三井物産→宇宙商社 教育事業も柱に高校や大学と提携|日経BizGateという記事で、Space BD社の社長、永崎将利氏へのインタビューを読みました。そのなかで永崎氏が、宇宙ビジネスとSDGsについて語っていたのが興味深いです。

成熟産業ならば競合他社とシェアを奪い合いますが、宇宙ビジネスはプレーヤー同士が協力し合いシナジー(相乗効果)で全体のパイを大きくする必要があります。だから、宇宙ビジネスはおのずからSDGs的であるととらえています。SDGsの本質は、私見では「『自分さえよければ』という考えを外す」というサステナブル(持続可能)中心の理念にあると考えるからです。

三井物産→宇宙商社 教育事業も柱に高校や大学と提携|日経BizGate

非常に面白い視点・視座であります。ただそれで言うなら宇宙産業に限らずあらゆる産業が、いまやその「SDGs的」という特性を備える方向で変革を求められていると思います。地政学的な難しさは依然あれど、サプライチェーンなどの観点から多くの業種・業界において「自分さえよければ」という考え方が日増しに通用しにくくなっている認識です。宇宙ビジネスのみならず、あらゆるビジネスがSDGs的になるべきだし、また実際なりつつあるのではないでしょうか。

宇宙ビジネスに関わる人々は「地球での過ちを宇宙で繰り返してはいけない」といった共通認識を持っています。宇宙ごみを例に説明します。たとえば一定以上の高度に衛星を打ち上げると衛星自体は寿命が延びるものの、最後はごみになってしまう。だからNGです。そんな共通認識があります。

三井物産→宇宙商社 教育事業も柱に高校や大学と提携|日経BizGate

極論するなら、ゴミを捨てても構わなかった宇宙空間が、人類の活動圏の一部に含まれるようになった(人間圏が拡張された)ことで、そうではなくなった……ということですよね。なので、結局のところ地球と宇宙の別を問わず、どこまでの空間を人間圏として認知のうえ切り出し、そのなかでの物質循環を人為的にコントロールしていくかが本質的な命題ではないかと思っていて。

我々は衛星関連の部品調達でも、日ごろから「ごみにならないように」ということを考えて選定していきます。言い換えれば、宇宙ビジネスでは「地球人」としてどう行動するかが常に問われていると思っています。

三井物産→宇宙商社 教育事業も柱に高校や大学と提携|日経BizGate

そもそも何がゴミで何がゴミでないかっていうのも、実はそう単純な話ではなく、議論の余地があるでしょうね。遠くない将来、軌道上サービスが実現し一般化した暁には、寿命を迎えた人工衛星……つまり今現在は宇宙ゴミとして捉えざるを得ない存在も、新しい人工衛星を軌道上で生み出すための貴重な原資となるかもしれませんし。そんなことをつらつらと考えました。