人工衛星の地上での回収を目論むOutpost Technologies

宇宙開発とサステナビリティ Advent Calendar 2022の10日目の記事です。今年9月の記事ですが、宇宙から人工衛星を回収し再利用、Outpost Technologiesが約10億円調達–23年打ち上げへ – UchuBizはサステナビリティの観点で注目に値するものでした。

再利用可能な人工衛星システムの開発に取り組んでいるOutpost Technologiesは、計画の実現に向けて710万ドル(約10億円)の資金調達を実施した。

宇宙から人工衛星を回収し再利用、Outpost Technologiesが約10億円調達–23年打ち上げへ – UchuBiz

私はこのニュースを読むまでOutpost Technologiesという社名をまったく知らなかったのですが、同社のWebサイトにあるAboutページを読みますと、2020年設立のようです。

Outpost was founded in 2020 by industry veterans Jason Dunn, Michael Vergalla, and Aaron Kemmer.

About

閑話休題。同社の目論見は、以下のようなものです:

Outpost Technologiesによると、現時点で実用化されている人工衛星や宇宙船の地球帰還方法は、効率が悪くコストも高いそうだ。これに対し、Outpost Technologiesは帰還プロセスを、大気圏再突入時の減速と滑空による飛行という2段階に分けることで、改善を図る。具体的には、大気圏に突入する際は軽いヒートシールドを膨らませて人工衛星を熱から保護し、十分減速できたらパラグライダーを広げて滑空して、正確な位置へ着地するという。

宇宙から人工衛星を回収し再利用、Outpost Technologiesが約10億円調達–23年打ち上げへ – UchuBiz

技術的には十分可能な内容に思えますが、私が気になるのはその経済合理性、ですね。

人工衛星を地球に戻して再利用することで、全体のコストを下げると同時に、ペイロード(貨物)を回収する宇宙利用が可能になる。さらに、使用済みの人工衛星が軌道に長く留まることも避けられて、宇宙ゴミ(スペースデブリ)の減少にもつながるだろう。

宇宙から人工衛星を回収し再利用、Outpost Technologiesが約10億円調達–23年打ち上げへ – UchuBiz

もしも、軌道上で燃料の補給や装置の交換といったサービスが将来受けられるようになるなら、わざわざ地上に戻して再利用するより当然安上がりでしょう。そうでなくとも、人工衛星の開発や運用にかかるコスト次第なところはあれど、地上に戻すのって直感的にはコスト削減に貢献しにくく映るのですよね……ある程度、詳細に見積もったうえで勝算があってのことだとは思うのですが。

ともあれ、人工衛星の3R(Reduce・Reuse・Recycle)なり、宇宙開発におけるサーキュラーエコノミーの推進といった観点からすれば、さまざまな再利用の方策を模索すべき段階かなと思いますし、Outpost Technologiesの取り組みがどの程度有効なものか、今後注目したいと思います。