書籍『宇宙開発をみんなで議論しよう』に見る、宇宙開発とサステナビリティ(前編)

この記事は、宇宙開発とサステナビリティ Advent Calendar 2022の11日目の記事です。

今年6月に発売された書籍、『宇宙開発をみんなで議論しよう』は、宇宙倫理学に関心のある私にとって、大変興味深い内容でした。宇宙ユニットシンポジウムでお世話になってきた磯部先生ですとか、かつての職場の先輩でいらっしゃる寺薗さんが執筆者として参加されている点でも、個人的には注目の一冊でした。

そんな『宇宙開発をみんなで議論しよう』から、宇宙開発とサステナビリティの関係に言及しているくだりをいくつか引用し紹介したいと思います。

近年企業倫理のあり方として注目されている「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」の考え方では,企業が(人権問題や環境問題を含む)社会的課題に取り組むことがもとめられ,またそうした取り組みが長い目で見た企業の利益にもつながると考えられています.これは宇宙企業にも当てはまります(杉本 2018).

書籍『宇宙開発をみんなで議論しよう』p.15

企業と社会の関わりを語るうえで外せないキーワードというかバズワードは、時代とともに変化しており、最近ではCSR、SDGs、ESGなどさまざまありますが、なかでもCSRは最も古い部類ではないかと思います。そしてそのCSRは業種・業界や企業の規模を問わず備える(いや「備わる」か?)ものであって、ゆえに比較的新興の宇宙企業にだって当てはまると私は思います。

宇宙ビジネスが今後順調に発展していくためには,企業が自身の社会的責任を認識することが求められ,またそれを果たすために市民の意見を取り入れていくことが有効な手段になると考えられます.

書籍『宇宙開発をみんなで議論しよう』p.16

ビジネスが宇宙に関わるとなれば、自ずと当該ビジネスにとってのステークホルダーは増えるというか、究極的には全世界の人々がステークホルダーに該当し得ると思うのですよね。となれば、その社会的責任は相対的に大きく・重くなりがちでしょうし、ゆえにステークホルダーの意見を適宜汲みながらビジネスを推進することが一層重要になるのではないでしょうか。

最近の宇宙開発では,「持続可能性」がキーワードになっていることも注目すべき動向です.2015年に国連で定められたSDGsは、様々な分野における取組み推進が関係しており,宇宙開発も例外ではありません.

書籍『宇宙開発をみんなで議論しよう』p.21

はい、例外ではありませんね。CSRという考え方は、あらゆる企業に適用できる……というのは先述のとおりですが、同時にそれはどんな企業でもSDGsに貢献し得るし、国連に加盟する国の企業であればむしろ貢献すべきっていう話にもなると思います。宇宙開発企業も、当然その範疇に含められる認識であり、それは研究成果報告書「社会課題解決手段としての側面に焦点を当てた宇宙開発広報の可能性に関する考察」にも記した通り。

後編に続きます。