書籍『宇宙開発をみんなで議論しよう』に見る、宇宙開発とサステナビリティ(後編)

この記事は、宇宙開発とサステナビリティ Advent Calendar 2022の12日目の記事です。昨日に続き、書籍『宇宙開発をみんなで議論しよう』から、宇宙開発とサステナビリティの関係に言及しているくだりをいくつか引用し紹介します。

宇宙開発を通じて持続可能性に貢献するというアプローチだけでなく,宇宙開発そのものをいかにして持続可能にしていくかという視点も重要です.

書籍『宇宙開発をみんなで議論しよう』p.21

まったくもって同感であると同時に、両者を混同することなく取り扱うことが必要ではないか、と私は考えます。もちろん、持続可能性に貢献する宇宙開発を持続可能な方法でもって実現する、すなわち両者を満たした宇宙開発が最も理想的であることは間違いないですけどね。

宇宙ゴミの増加の速度は一般にイメージされているほど速くはありません.適切な排出管理さえすれば,200年かけてもその数は倍にもならないと予測されています(Liou 2011).

書籍『宇宙開発をみんなで議論しよう』p.108

これは、宇宙ゴミを減らす努力を積極的にしなくてもよいとの立場にたった際の論拠として出てきた話なのだけど……結構意外だったというか、そういう研究結果があること自体、もっと知られていいし、知られるべきかもしれません。私自身は、そうはいってもやっぱり宇宙ゴミは人命や将来の宇宙開発の可否に関わる以上は減らすべきとの立場に立つし、上記の研究にしたって「適切な排出管理さえすれば」という前提を置いてのことだし。

回収ができるようになった時にどういうビジネスモデルで儲けるのかということははっきりしていません.大事なことだから誰かがお金を出すだろうと見込んで技術開発をしているという段階です.

書籍『宇宙開発をみんなで議論しよう』p.114

上記は、宇宙ゴミを削減することにビジネスとして取り組んでいる企業に向けた言葉でしたが、なるほど「誰が」その処理にお金を出すのかは定かではありませんね。その誰かとは、ひょっとすると宇宙ゴミを排出してきた全ての国や企業、ということになるのかもしれませんけど……もし仮に誰もお金なんか出さないよということになったら、どうなるでしょうね。なかなか面白い思考実験かもしれません。

次世代の人々も「夢」と「ロマン」を追い続けることができるようにするために,現在の我々は,宇宙に行くことのリスク,宇宙に行くことができなくなることのリスクなど,それぞれのステークホルダーが考えるリスクとベネフィットを正しく理解して,持続可能な宇宙開発を目指した責任ある行動を取ることが求められます.

書籍『宇宙開発をみんなで議論しよう』p.156〜157

将来世代に対する責務として持続可能な宇宙開発は必要との論。宇宙倫理学について思考し始めると、なかなかこの「将来世代に対する責務」というのがシンプルなようでいて難しく感じます。いつの世代も将来に対してはその種の責務があると同時に、どうせ自分が死んだあとのことなんて知ったこっちゃないと割り切ったうえで逃げ切る自由みたいなものも認められるべきかもしれず。

人類がこれからも宇宙開発を続けるためには,宇宙空間の持続可能な開発利用方法を構築することが求められます.そのための規範やルールを考えるためにも,「宇宙開発をみんなで議論する」ことが重要になるのです.

書籍『宇宙開発をみんなで議論しよう』p.157

御意。